hebogoの徒然なる日常

気ままな日々をそのままに

長年の疑問がとけた話 東方朔と三浦の大介

 私は落語が好きである。好きなのだが、古典落語の中には、現代人にはよくわからない言葉などもちょいらょい含まれており、結構気になるのである。

そして私は歴史も好きである。基本的にどこの国のどんな歴史でもそれなりに興味深いのだが、その中でもとりわけ好きなのが、中国古代史である。もし宮城谷正光先生がいなかったら、自分で小説をかいてしまいたくらいに好きである。


なので、この時代については結構たくさんの本を読んでおり、著名な逸話などはたいてい知っているのだが、今回は人物を主役にしてというあたりがちょっと目新しかったので、この本(中国人物伝第1巻)を読んでみた。

乱世から大帝国へ 春秋戦国―秦・漢 (中国人物伝 第I巻)

乱世から大帝国へ 春秋戦国―秦・漢 (中国人物伝 第I巻)

 


著者の井波律子氏は著名な中国文学の研究者であり、この人の書くものならまずは安心して読める。

この本で取り上げているのは春秋戦国時代から後漢の成立までで、人物としてはいわゆる春秋の五覇から、後漢光武帝あたりまでである。
やはり知っているエピソードが多いのだが、一つ長年の疑問が氷解したことがあったので、今日はそれについて書いてみる。

長年の疑問というのは、東方朔という人物のことである。
話はそれるが、昔は厄払いというものがあった。
晦日に、町を歩きながら各戸をまわって、厄払いの口上を述べてなにがしかの謝礼をいただくのだが、その口上が以下のようなものであった。

「あぁ~ら目出度や、目出
度やな、目出度いことで払おなら。鶴は千年、亀は万年、浦島太郎は三千歳、
東方朔(とぉぼぉさく)は九千歳(くせんざい)、三浦の大介(おぉすけ)百六つ。
かかる目出度き折からに、如何なる悪魔が来よぉとも、この厄払いが引っ掴
み、西の海へさらり、厄(やっく)払いまひょ」

これが上方落語の厄払いという噺に出てくるのだが、ここに出てくる「東方朔」というのが何者であるのか、ずっと疑問に思っていたのだ。その疑問が、この本のおかげで解けたのだ

東方朔は、この本によると,漢の武帝に仕えた官僚であったのだそうだ。それも、普通の官僚ではなくて、「滑稽」と呼ばれる存在であった。

「滑稽」とは、滑稽・多弁を特技とする宮廷の道化であったそうだ。
そして、東方策はそれ以外に様々な奇行でもしられており、それやこれやで後世仙人と見なされ、西王母の桃の実を盗んで食べて長寿を得た、などという伝説が生まれたのだそうである。

で、ついでに、これもよくわからない「三浦の大介百六つ」の方も調べてみたのだが、こちらは三浦大介義明という源頼朝を支えた豪族で、89才で亡くなったのだが、17回忌まで生きたという伝説が生まれたので、百六つということになるのだそうである。

長年の疑問が解けて、ほっとした。余談だが、落語にはこんな感じでなんとなくわかったような顔をして聞いてるけど、実はよくわからない、ということがたくさんある。その疑問が解けると、少しだが学ぶ喜びみたいなものを感じるのである。


米朝 『厄払い』  rakugo